「大丈夫か?」
「す、すみません。ありがとうございます」
「怪我は?」
「だ、大丈夫です」
「そう」
「助けていただき、ありがとうございます。見ず知らずの先輩にぶつかった上に、転ばないように助けていただいただなんて感謝の気持ちでいっぱいです」
「!!…あんた…俺のこと知らないの?」
律は自分の存在を知られていなかったことに驚きを隠せないでいた。
これだけ校内に限らず、雨宮流次期家元として有名な律。
男女問わず、自分を知らない人間がいたとは信じられないでいた。
「すみません…存じあげないです。…あ、もしかして有名な方でしたか?!」
「いや、知らないならいい」
「そうですか。私…そういうのに疎くて…。本当にすみません…」
「それより、急いでたみたいだけど、大丈夫なわけ?」
「あっ!そうでした。逃げなきゃ!」
「逃げる?」
「…はい。助けていただいたのに、すみません…」
そう言うと、女の子は走って行ってしまった。
「変な女」
そう言うと、律はまたイヤホンをつけ、職員室へと向かった。

