「そんな優しい顔するの、初めて見た」


「……」


「その子には、私は敵わないのね」


「うん」


「ひどいなー」


そう言いながら、けらけら笑っている。


「さっきのキスはなかったことにする」


「…ごめん」


「謝らないでよ。さっきのは事故なんだから」


「あのさ、」


「なに?」


「名前、教えて」


…なんとなく。


なんとなく、聞きたくなっただけ。