「楽しかったの、兄ちゃん」


「…まあまあ」


「そう」


修学旅行から帰ってきた俺に、佑希は苦笑い。


こいつは、昔から俺を兄として見てる。


兄らしいことなんて、ひとつもしてないのに。


「佑希」


「ん?…って、うわ!」


いきなり投げた箱を、慌ててキャッチする佑希。


その中身は、クッキー。


甘いものが大好きで、お菓子とかよく食べて叱られている。


叱られても懲りずに食べているけど。


「ありがと、兄ちゃん!」


後ろから嬉しそうな声がした。


…母さんに見つかるなよ。


心の中で呟いてみた。