あいつがいい。



「…大丈夫?」


「…ん」


心配そうに揺れる瞳に、俺は少し笑う。


「…帰る」


「そっか」


「ありがと」


「ううん。頑張ってね」


立ち上がっても、目線は俺の方が下。


「身長、伸びたね」


まだまだ伸びないと。


優花を早く抜かしたい。


勝てるものが、それくらいしか、ないから。


…なんて、言っててむなしいや。


「またね」


手を振る優花に背を向けて、俺は家へと歩き出す。