「それに……風馬が母さんが一人ぼっちかもしれないなんて悲しむ必要なくね?」


そう風馬に問いかけると、風馬はキョトンとしていた。

だから……

俺は墓の花受けを指差した。


「ケーゴさん……お前の母さんのこと、忘れてなかったじゃん。……俺の母さんと再婚したって。

それに、優花だって母さんが好きなマリーゴールド忘れてなかった。

風馬だって、母さんの為に毎日ここに来てやってたんだろ?」


風馬はまだ涙で潤んだ瞳で、黙ったままコクンと頷いた。


「みんな、忘れてないじゃん。

今日のことも、俺も優花も忘れない。

悲しむことなんて、何もねぇよ」


風馬の頭をグシャグシャと撫でてやると、風馬は涙を流して何度も頷いた。


「……今度は、みんなで墓参りに来よっか?マリーゴールド持って。」


そう言うと、風馬も優花も強く頷いた。


さっき、花屋で優花に教えてもらった。


マリーゴールドの花言葉は、

『変わらぬ愛情』。



花受けにいけられた満杯のマリーゴールドが、

なんだか恥ずかしそうに
優しい紅の光に照らされていた。