「……俺も一緒だったよ。もう高校生なんだからワガママ言うのかっこ悪りぃって思ったし、父さんのこと考えたら喜んであげたいって思った。

……誤解しないでほしいんだけど、別に実里さんが嫌だとか、そんなんじゃないから。

実里さんはすっごく優しくて面白くていい人ってことはわかってる。


でも……一緒に暮らすようになって、『家族』が増えて、実里さんもあんたも、みんなが仲良くなっていくにつれて……

これでいいのかなって思ってきた。


なんか……母さんが忘れられていきそうで、母さんが一人で悲しんでんじゃないかって感じて……。

だから………。」


もう最後のほうは泣きそうで、声が震えて聴こえずらかった。


「……だから、ママのとこに来てあげてたの？……毎日？」


風馬の言葉を代弁したのは優花だった。

優花の言葉に風馬は黙ったまま頷いた。

少し震えた肩から、風馬が泣いているのがわかった。


「……だって……俺があん時、道路に飛び出さなかったら……母さんは死んでなんかなかった……。

今も生きてた………。

そしたら、父さんも母さんも優花も俺も……一緒に暮らせてた……。

母さんが死んでなかったら、父さんも、優花も、俺も……悲しい思いなんかしなかった……。」


そう言って風馬は墓の前でしゃがみ込み、泣き出した。

それを見た優花が駆け寄った。


「……風馬……。……誰のせいでもないよ。」


優花は風馬の肩をそっと抱き寄せて、まるで赤ちゃんをあやすように、そっと背中を撫でていた。


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