「なぁ透子、ごめんって。」


いつまでも黙り込くってる透子の肩をぐいっと引き、無理矢理こっちを向かせた。


「…!?

……透子……?」

「みっ、見ないでよっ!」


透子はまた、俺にそっぽ向いた。


透子は泣いていた。


まさか泣いてるなんて思ってなくて、俺は言葉が出ない。


柔らかく、少し暑いくらいの風が、

野球部の生徒の掛け声や、バスケ部のボールを打つ音を混ぜて、

俺と透子の間に吹き込む。


少しの沈黙の後、俺は目線を合わすように透子の横にしゃがんだ。


「……なぁ、透子。…ごめんな。ほんと言い過ぎた、俺。マジ、ごめん。…別に悪気があって、透子に言わなかったわけじゃねぇから。」

「………。」

「……俺の母さんさ……再婚するんだ。…それで、昨日たまたま駅で、その再婚相手の娘に会って、なんか変な奴に絡まれてたから、助けただけなんだ。」

「……っぅして?」


何か声を発した透子は、まだ涙が潤んでる目で俺を見つめた。

ようやく、目を合わせてくれた。


「…ん?」

「……どう…っして……っ……実里さんの……っ……再婚のこと……晴には……話して……っ……わ、私には……ひとつも……話して…くれ……っなかった…の……?」


こうも泣かれると、本当に悪い言い方をして傷つけてしまったんだなと思う。


だから俺は正直に素直に、彼女に話した。