「…ふざけんなよ。なんで、そんな大事なこと黙ってわけ?籍入れてないなんて話、風馬だって優花だって…誰も訊いてねぇけど」
「……だって、訊かれてないもん…」
母さんが下を向いてブツブツ言うから、余計腹立つ。
「……自分らが勝手なことばっかして、振り回されてるこっちの身にもなれよ!
真面目な話してんのに、笑ってばっかで何が思い通りになってよかっただよ…ふざけんな。
ずっと『兄妹』だと思ってた俺と優花の気持ち、わかって言ってんのかよ!
……初めからわかってたら……俺も優花も……辛い思いなんかしなくて済んだのに…」
『兄妹』だと思って、
好きになることを諦めようとした。
何度も胸が苦しくなって…
何度も胸が張り裂けそうになって…
それでも何度も諦めようとした。
なのに……
ずっとずっと悩んでたのに。
俺と優花は、
『兄妹』なんかじゃなかったって……。
「………ユキ…ごめん……。……そうね……初めに話すべきだったわよね……ごめんなさい…」
母さんが俺に頭を下げた。
頭を下げただけじゃ済まない問題だと思った。
『兄妹』だという関係だと思い込まされていた俺と優花は、
今までどれだけ苦しんだんだろう。
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