いや…別にそう言うつもりで言ったんじゃ…あ、でもほんといい加減なつもりで優花に好きって言ったわけじゃないし…

まぁ…もし、そうなればいいなとも思うけど…


なにやらブツブツ考えてる俺に風馬は苦笑いしながらため息をつく。



「まぁ、いいけどー…」


そう風馬が笑った瞬間、ガチャって玄関のドアが開く音がした。


「ただいまー!」


下の階から母さんとケーゴさんの声が聴こえた。


「あ、帰ってきた。しかも、二人一緒に帰ってきたみたいだし、ちょうどいいはじゃん」


ベッドであぐらをかいていた風馬が立ち上がるから、さっきまで顔を赤らめていた優花が急に真顔になる。


いよいよ、親に話す時が来た。


優花がそんな顔するから俺まで変な緊張感がうつる。


「……俺もついてった方がいい?」


立ち上がった風馬が俺に訊く。


「……どっちでも。ってかお前楽しんでるだけじゃね?」

「……いや、やっぱついてくわ」


二秒ほど顎に手をおいて考えた風馬がそう言った。


「……なんで?」

「……親父、キレたら怖いから」

「……ビビらすなよ、バカ」


そう言うと風馬はイジワルに笑って、「まぁ頑張れよ。なんかあったらすぐ止めに入るから」って俺の肩をポンと叩く。




別に結婚の話をするわけでもないのに、風馬がそうイジワル言うから、

気持ちはまさに彼女のお義父さんに結婚のお許しを頂く男な気分。


先に部屋を出ようとする風馬のあとをため息をこぼしながらついていくと、後ろから優花が一瞬だけ手をギュッと握る。


振り返ると、優花は小さく微笑んだから俺も微笑んで、その笑顔に応える。





この笑顔を守る為…


この笑顔をずっと隣で見つめる為なら、


誰になんて言われようと


『兄妹』なんて関係ー……


ブチ破る覚悟なんて出来ていた。