「……ユキちゃんのバカ、バカ、バカ、バカ……」


そう言って優花は泣きながら、俺の腕を叩く。


「……実里ママに言いにくいんだったら、風馬でも、あたしにでも相談すればいい…っ……。

……あの時……ユキちゃん…風馬に言ったじゃない……

『家族みたいなもんにはなれる』『これからは楽しいことも、辛いことも共有できる』って……っ……。

……っ……ユキちゃんが言ったくせにっ……。

………そんな大事なこと……一人でなんか悩まないで……っ……

……ユキちゃんだけの…問題じゃないんだよ……っ……」



泣きじゃくる優花を見ていられなくて、俺は優花を抱きしめた。


俺が悩んでいたことに、優花まで悩ませてしまっていたかと思うと胸が痛くなった。


泣いているせいで、俺の肩に優花の熱い息がかかる。

ギュッと抱きしめた、優花の温もりと香りにまた身体中が反応する。


やっぱり俺は優花が好きで好きでたまんないんだって……。



「……ごめんな……優花まで…悩ませて……」


そう言うと、優花は俺の胸の中で一生懸命首を横に振る。


「………ユキちゃん……っダメだよ……この家…出ていったら……っ…。

……実里ママも……パパも……風馬も…悲しむよ……っ……」


抱きしめているせいで、くぐもった優花の声がなおさら愛しく感じる。


「………優花は……?……俺が…家…出てったら……」


泣いている優花の頭を撫でながら訊くと、まだ潤んでいる瞳で俺を見上げる。


「……っ……悲しいよ……っ……。……出ていくなんて言ったら……っ……怒るからっ……すっごく…怒るから…っ…!」

「……マジで?……怒ってキレる優花、ちょっと見たいかも…」


そう言って少し笑うと、優花がドンッと俺の胸を小突くから、俺はその手をギュッと握りしめた。


「……俺も……。……優花と離れんの……やだよ……」




「えっ…」と小さく呟いた、その優花の唇に顔を寄せる。


少しづつ縮まっていくその距離に、優花が静かに目を閉じた。