「……どういうことですか?」

「…………」



しばしの沈黙のあと、ユキちゃんのパパがあたしに話したのは、あの日、ユキちゃんと話した内容だった。


それを訊いたあたしは、胸が締めつけられて今度は痛くなった。





「……ユキがそんなに悩んでいるなんて、知らなかったよ。……でも…真剣に考えてほしいんだ」


そう言うユキちゃんのパパをあたしは目を逸らさずに真っ直ぐ見つめた。


「………そんなこと…。…どうして、覧里さんにも話さないんですか…?……家族なのに…」

「……私と実里は離婚したんだ…。実里には新しい家族がいる。……ユキと私の問題だと思ったんだ」

「……そんなのひどいです!」


声を荒げたあたしに、ユキちゃんのパパは少しビックリしたようにあたしを見る。


「……ユキちゃんは……あたしにとっても、風馬にとっても、パパにとっても…もちろん、実里さんにとっても、大切な家族なんです……二人だけで話すことじゃない……ましてや…そんな大事なこと……ユキちゃんだけに背負わせてしまうような問題じゃないです…」


涙が出そうになったけど、唇を噛み締めてそれを我慢した。


だって……

ユキちゃんはもっと……

辛いんだって思ったから。



「……私にとっても……ユキだけなんだよ。血が繋がった家族は……」


今度は笑うことなんかなく、悲しそうに呟いたユキちゃんのパパの言葉に、言葉が出なくなった。


「……確かに……実里にだって話さなければならないことだろう…いや、実里だけじゃなくて……優花ちゃん達にも…。

でも……まずはユキの気持ちを知りたかったんだ。

まだイエスともノーともわからないうちに、君たちに話すのは迷惑だと思った。


君たち、家族をかき乱すだけなんじゃないかって……。

ユキがノーと言えば、私は諦めるしかなたい……。

でも……ユキがイエスと言えば、きちんと君たちに話をしにいくつもりだ」



ユキちゃんのパパは、真剣な表情であたしを見つめた。


「………答えを出すのは、ユキなんだよ」











そのあとの家までの帰り道ー。


あたしはずっと……

ユキちゃんのことを考えていた。



そんな大事なことをずっと一人で悩んでいたユキちゃんが、時に無理して笑っていたんだと思うと、胸が痛くなった。


ねぇ、ユキちゃん……


一人でなんて悩まないでよ……。


あたしもいるし、風馬もいるよ…?



一人でなんて答え見つけないで……。



ユキちゃんのことを思うと、涙がこぼれそうになって、あたしは思わず歩道にしゃがみ込んで、涙を流した。


「……ユキ……ちゃん……っ!…」





また、あなたの笑った顔を近くで見たいんだよ。