「……なんで優花のこと、知ってんの?」
そう訊くユキちゃんの態度は、あまり機嫌が良くないように感じた。
「……いや、たまたまユキと、え〜と…?」
男性があたしの顔を見る。
「あ……栗原 優花です」
「……そう、ユキと優花ちゃんがいるのをたまたまこの駅のホームで見たんだ。
走り出した電車の中だったから、声かけれなくて……
それで昨日ここにきたら、たまたま優花ちゃんを見かけて……もしかしたら、ユキに会えるかもしれないって思って…ついて行ってしまったんだ…。
あんな大きな家に住んでるんだなぁ。実里は再婚したのか?
……優花ちゃんは…?ユキの彼女かい?」
そう訊かれて、慌てて首を横に振ったのと同時にユキちゃんが口を開く。
「……優花は母さんの再婚相手の娘。三月頃、再婚したんだよ。……だから、なに?今更、何の用…?」
「……ユキちゃん…」
もう何年も会っていないはずなのに、今更何の用で来たんだってユキちゃんは怒ってる。
ユキちゃんがあの写真を見なければ、自分の父親だってわからないくらい……時間は経ちすぎていたんだ。
「………申し訳ない…。……どうしても会いたくて、ずっと捜してたんだ」
「……だから、なんで今更なわけ?探偵でも何でも使えば良かったんじゃねぇの?……社長さんなんだろ?」
「………ちゃんと……自分の力で…探したかったんだ…」
ユキちゃんのパパは氷が溶けかけている水に視線を落として、さみしそうに呟いた。
「………話があるんだ、ユキ」
「……なんだよ」
なんだか重い空気になっていって、あたしは邪魔かもしれないと思った。
「……あ、あたし……外すね」
そう言って、カバンを抱えて外に出ようとした時、ドアのところでユキちゃんに呼び止められた。
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