「……え……?」

「……聞こえなかったの?……これ以上、もうユキと関わらないでって言ってるの。……成宮君って人がいるんだから、困ったことがあれば、成宮君に助けてもらったらいいでしょ?……ユキを巻き込まないで」


透子ちゃんは真剣だった。

あたしを見つめる透子ちゃんの目が少し怖くて、思わず目を逸らした。


「……待って、透子ちゃん…。……ユキちゃんはお兄ちゃんなんだ…「『お兄ちゃん』なんかじゃないでしょ…?」


ユキちゃんはお兄ちゃんなんだから…そう言おうとしたのに、言い終わる前に透子ちゃんの言葉に遮られた。


「……ユキは……

初めから……あなたの『お兄ちゃん』なんかじゃないでしょ……?」


透子ちゃんの目に、すべて見透かされていたんだ。


あたしが初めから…

ユキちゃんを『お兄ちゃん』としてなんか見ていなかったこと。


ユキちゃんを『お兄ちゃん』として、自分の気持ちに嘘ついてたこと。


すべて……

誤魔化していたこと。


……ユキちゃんは、

あたしの『お兄ちゃん』なんかじゃない。


「…………」

「………ユキは、あたしのものなんだから…もうこれ以上……関わらないで。

……それだけ言いたかったの」


そう言うと透子ちゃんは屋上から出て行った。


透子ちゃんが階段を降りて行く足音が背中の後ろから聞こえる。


胸元のペンダントトップを握りしめて、足の力が抜けていく感じがして、その場に座り込んだ。