「…っいたっ…」
後ろを向いた瞬間、そう声をあげる優花。
「……どした?」
優花の前に回り込むと、優花は痛そうに肩あたりの後れ毛を触っていた。
「……あ、どうしよ……絡まっちゃった……」
優花のクリンとした後れ毛が勢いよく後ろを向いた瞬間、ネックレスに絡まってしまったようだ。
「……どれ、かしてみ」
そう言って優花の肩の後れ毛とネックレスの絡まりをとろうと触れた瞬間、俺は見つけてしまった。
「……あれ……俺があげたやつ…」
後れ毛に絡まっていたネックレスは俺が遊園地に行ったとき、優花にあげたものだった。
合宿の時以来、優花がそれをつけているのは見ていなかった。
「……え……あ……ずっと…つけてるよ…?」
その返事はなぜか焦っているように聞こえる。
「……でも、合宿ん時からつけてなくね?」
ネックレスのチェーンと後れ毛の絡まりを取りながら、優花の顔を見るとやっぱりなんか焦ってる。
「……今日……成宮とデートだったのに……これ、つけてたの…?」
成宮はそんな事情なんて知らないだろうけど、他の男にもらったものを彼氏とのデートでつけてくなんて、なんとなく…優花らしくないって思った。
「……成宮に何にも言われなかった?」
そう訊くと、優花は俯いた。
「……怒られちゃった……。…あたし、嘘つくの下手だから…正直にユキちゃんにもらったものだって言ったの…。そしたら、成宮君怒っちゃって……それで、成宮君、帰っちゃったんだ」
苦笑いしながら、優花が言った。
「……なんでつけてくんだよ。成宮の肩持つわけじゃねぇけど、やっぱそんなの気分良くねぇんじゃね?」
「………うん…わかってた…。……でも、あたしはつけていきたかったの……。……お守りみたいなものだから……あたしにとって」
「……お守り?」
「……うん、お守り」
優花はそう言うと、誕生石を抱きしめているクマのペンダントトップを握りしめて微笑んだ。
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