〜♪


俺の携帯に着信を知らせる音が鳴る。


「……よく、鳴るなぁ……あ、風馬からじゃん。……もしもし?」


そう電話に出ると、電話越しの風馬はなんだか気まずそうに話す。


『もしもし…?……わりぃ。……今、どこ?』

「え、さっきの花壇のとこから数メートル進んだとこ。……なに、もう麻依ちゃん送ってきたの?」


立ち止まって風馬と電話で話していると、優花が一生懸命背伸びして会話を聞こうと携帯に耳を寄せてくる。


……いや……これ……


近いんですけど……。


『……いや、それがさぁ…駅まで行ったら、麻依の親が車で迎えに来ててさぁ……超緊張したし!』


携帯から漏れる声に優花も聞こえたようで、風馬のその会話に俺と優花は顔を合わせて笑う。


「マジかよ(笑)ちゃんと挨拶したか?」

『したよ!噛みまくったけど…』


優花がふふふと声に出して笑うから、俺まで笑ってしまい、風馬に笑うなと怒られる。


「んで?用、それだけ?風馬も合流する?今から優花と神社行って何か食べよって言ってんだけど」

『……あ〜……でも、邪魔しちゃ悪いっしょ?』


このまま優花に会話を訊かれては、風馬が良からぬことを口走りそうなので、優花から携帯を遠ざける。


「……お前もちゃんと飯食ってねぇんじゃねぇの?来いよ。どうせ、近くにいるんだろ?」

『……う〜ん……家の鍵忘れちゃったんだよね』


携帯を遠ざけたせいで、優花がプクッと膨れて拗ねていた。


「…なら、尚更来いよ。ここで待ってっから」

『……うん、そうするわ。ごめんな、せっかく二人でイチャイチャ出来そうだったのに……。……あ、なんなら鍵だけ貰えれば、二人きりにするけど?!』

「……いや、もうそういうのいらんから早く来い」


風馬の行為はありがたいけど、極力二人きりは避けるべきだと思った俺は強引にそう言って電話を切った。


振り返ると優花が頬を膨らませて拗ねている。


「……何の話してたのー?何がいらないのー?」

「……優花には秘密ー。俺と風馬の秘密」


イジワルにそう言って笑うと、優花は「ズル〜イ、あたし除け者にして」とプイッと拗ねて後ろを向いた。