「……何にも言い返さないってことは、図星かよ」

「……違う……あたしは…ユキちゃんのことなんか……「『好きじゃない』とか言うなよ」


もう風馬には全て見透かされてしまってるようだ。

今度は怒っているように聞こえたんじゃない。

風馬は怒っていた。


「……もう、嘘つくなよ。俺、何年優花と姉弟やってると思ってんの?わかるんだよ、優花が考えてることくらい」


そう言うと風馬はあたしが考えてることを全て当ててみせた。


「……成宮にいつものように言い寄られて、ユキを好きにならないように、ユキに嫌われて、これ以上自分に構わないように、成宮と付き合うことにしたんだろ?

どうせ、成宮にうまいこと言われたんだろ?利用してもいいから、優花がユキを忘れるまで待つとかなんとかさ…。

それに…荒川マネだってユキのこと好きなんだろうし…荒川マネとユキが付き合えれば諦めつくとか…

どうせそう言うつまんねぇ理由だろ?」



そう風馬に怒りながら言われ、あたしは我慢していた気持ちを吐き出した。


「……風馬になんかわかんない。風馬にとっては紙切れ一枚の問題かもしれない。血なんか繋がってなくたって、あたしとユキちゃんは『兄妹』なんだよ?

戸籍上ではそうなの。

言ったら、あたしが弟の風馬に恋してしまってるってことなんだよ?

そんなのおかしいでしょ?」

「だから、血なんか繋がってねぇって言っ…「もう、決めたの!」


荒げた風馬の声を遮った。


「……もう、決めたの……。あたしが……ユキちゃんのこと……好きになると……こんな風に…っ……家族が傷つく……。

……っ……もう……大事な家族を……失いたくない……。……風馬にだって…わかるでしょ……?」


我慢していた気持ちと涙が一気に溢れた。

こんなこと、風馬に言いたくなかったのに……

だから……我慢するのは、あたしだけでいいって思ってたのに……。


「……全然、わかんね……。好きなら……それでいいじゃんか…」

「……っ……」


風馬は変わらずあたしを睨みつける。

あたしも涙目で風馬を見つめた。


こんな姉弟喧嘩なんて初めてだった。


「………勝手にすれば?……ユキと荒川マネがもし付き合うことになって、後悔してもしんねぇから」


そう吐き捨てるように言うと、風馬はロッジの方へ戻って行った。