今更ショックを受け、机に突っ伏してる俺に晴は満面の笑みでこう言った。


『お兄ちゃん♪これからよろしくな♪』と。






それからしばらく経って、新居への引越しまであと一週間をきった日、

部活動が終わり、家へと帰るときだった。

最寄りの駅で、鞄から定期を出そうとしたとき、「俺から逃げんなよ」という男の声が耳に入った。


声の方を見ると、学生服を来たカップルがいた。

彼女と思われる女の子は下を向いていた。


「……俺から逃げられると思ってんの?」



彼氏だと思われる男はなんだか偉そうに彼女を睨みつけ、不敵に笑いながらそう言う。


なに?

オラオラ系彼氏?

あんな彼氏のどこがいいんだ?


こんな一目につくとこで、でっけぇ声でかわいそう……。


鞄の中にあるはずの定期がなかなか見つからず、別に聞きたくもないカップルの小競り合いが耳に入る。


「……別に逃げてるわけじゃない。……あなたとは付き合えないって、前から言ってるでしょ?」


へ?

付き合ってるんじゃねぇんだ。

男がしつこい系?


「……どうせ、転校っつったって、隣町なんだろ?わざわざ転校なんてしなくていいのに、学校変えるってことは逃げるつもりなんじゃん。……お前、いい度胸してんね。」


転校……?

隣町って……。


ん?


……もしや?


近くの公衆電話の影に隠れて、そのカップルの様子を伺う。


髪は金に近い髪色、耳にはピアスのチャラ男と話をしているのは……



え?


あれ、優花じゃん……。



「……もう、あたしに関わらないで。こんなことしたって何の意味もないじゃない」


おっとり口調だった優花が、そのときは強気に言った。


「意味あるかないかは俺が決めんだよ。勝手に決めつけんな」


男はそう言うと、優花の手をガシッと掴む。


「ちょっと来いよ、違うとこで話しよ」

「もう、離して!あなたと話すことなんてない……!」

「でっけぇ声出すなよ!」


優花は掴まれた手を離そうとするが、男が強く掴んでそれを離そうとしなかった。


これ、かなりマズイパターンかも……。


そう思ったのと同時に、俺はその男と優花のもとへと走り出していた。


優花が嫌がる、その奴の手を振りほどいた。