「……そりゃそうだけど……やっぱ『妹』だし……」
俺がブツブツ言ってると、電話越しに風馬の溜息が聞こえた。
『……多分、優花もユキのこと好きだと思うよ?』
……風馬までそんなこと言う。
「……それ、晴にも言われたわ。…なんで、そうなるわけ?」
『ほら、松丘先輩だってわかってんじゃん。鈍いの、ユキだけだし。松丘先輩はどこで、そう思ったのかしんねぇけど、俺……見ちゃったんだよね〜』
電話の向こうで風馬がニンマリしてんのが見なくても分かった。
『前、優花が洗濯物干してるときにユキのパーカーにほっぺたくっつけてんの。鼻までくっつけてクンクンしてるから、俺が何してんの?って訊いたら、「なんでもないっ!」って、超顔真っ赤にして焦ってんの(笑)』
「……なぁ、俺っていい匂いする?俺、今日、優花にいい匂いするって言われたんだけど…。だからじゃねぇの?」
『しらねぇし(笑)ってか匂いするまで近くにいたってこと?何したのさ、ユキ(笑)』
……しまった。
いらんこと、言っちゃった……。
『……好きな奴じゃないと、んなことしないっしょ?だから、優花もユキのこと好きなんじゃん?って思っちゃったんだよね』
……そんなのわかんない。
マジでただ単にいい匂いするから匂ってただけかもしんないし。
それだけであって、優花が俺のこと好きだなんて思うのは簡単に結べつけすぎな気がした。
『……まぁ、俺もうちょっと遅くなるから。頑張れよ、ユキ。あ、ヤる時はちゃんとゴムつけろよ』
そう無理矢理、電話を切られてため息を落とす。
早く風馬に帰ってきてもらって、どうにかこの二人きりの状況から脱出しようと思ったのに。
風馬が『優花もユキのこと好きだと思うよ』と言ったセリフが頭に残って、もしかして…と薄い期待みたいなもんが芽生える。
薄い期待みたいなもんと同時に、胸まで熱くなってくる。
少しづつ胸も頭も沸騰しそうな俺は一応万が一の時の机の引き出しに入れてる、最後風馬に忠告されたモノの確認をして部屋を出た。
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