……なんかこの会話あんまりよろしくない気がする。
透子が俺のことが好きっていうのがマジだったら、そんなこと優花に言われたらいい気分じゃないもんな…。
「……ふ〜ん……そうなんだ」
そう言いながら、無表情で俺をチラッと見た透子。
いつもの無表情のはずなのに、なんだか怖く感じたのはなぜだろう。
「あ、もう優花行かなきゃ」
何か殺気すら感じた俺は、早く本屋を出るように優花を促す。
「え?どこに?」
「……早く。時間ねぇよ。じゃあな、透子。また学校で」
そう透子に軽く挨拶くらいはしておいて、優花の手を引っ張って足早に本屋を出た。
はぁ……
早く透子と話しなきゃな…。
こういう雰囲気が一番嫌いなはずなのに、すぐさま透子と話ができない自分が嫌になる。
まさか透子が俺を好きだなんて思ってるなんて、思ってもみなかったことだし。
優花が『妹』なんかじゃなければ、普通に「ごめん、俺は優花が好きなんだ」って透子に話すことが出来るのに…。
「……ユキちゃん、どうしたの?…どこ行くの?」
本屋を出て、目的もなく歩いていた俺に優花が口を開く。
「え、あぁ……ごめん」
ずっと引っ張って握っていた手を離して、歩いていた足を止めた。
とりあえず本屋から出たかった俺は、何も考えず優花を引っ張ってきてしまって、優花が不思議そうに俺を見上げて我にかえる。
……どうしよ…
どこ…行こうかな……。
そう迷っている俺はあるものを思い出した。
「あ……なぁ優花、海行かね?」
俺が思い出したのは、さっき本屋の入り口にあった水着を着たグラビアアイドルが海辺で誘惑してるような格好をしたポスターだった。
この写真の格好みたいに、優花が俺を誘惑なんかしてきたら、もう多分俺とまんねぇな……なんて妄想してたから。
だからと言って、別に今から海に行って優花にそんなことさせるわけがないけど。
優花が俺の彼女だったりしたら、あんな男がウジャウジャいるところで裸同然の格好でなんか絶対行かせたくない。
というより、優花のそんな格好知るのは俺一人だけがいい。
見るのも、触んのも俺だけ。
……まぁどうもがいたって優花が俺のもんになるなんてことはないんだけど。
.


