帰り際、母さんはすっかり泥酔していた。


「うぅ〜……まだ飲むぅ〜……」

「……バカ」


身体の中の骨が全部抜けたみたいに、グデングデンになった母さんを俺とケーゴさんとで、ケーゴさんの車に乗せる。

ケーゴさんのワゴン車の後部座席に座らすと、母さんは窓に頭をもたれかけさせ、寝息をたてはじめた。


「……ごめんな、こんな母さんで」


走り出した車の中、俺はため息をつきながら、前の座席に座る風馬と優花に声をかけた。


「ううん。とっても楽しそうなお母さんでよかった。パパから色々話は訊いていたけど、やっぱり実際会ってみないと不安でしょ?でも、とっても安心した」


優花は満面の笑みでそう言ってくれた。


「……そう言ってくれて、俺も安心した」


優花の笑顔に、俺も自然と笑顔になってそう応えると、優花はニッコリ微笑む。




あぁ……

ヤバイ……

ほんとに可愛いな……コイツ……。


こんなに可愛いと、彼氏くらいいるんだろうなぁ……


くっそ〜……彼氏のヤツ、羨ましい〜……。







10分ほどで家に着き、ケーゴさんに家の中まで母さんをおぶってもらった。

寝室のベッドに寝かされた母さんは、ムニャムニャとなんか寝言を言っていた。


「ごめんね、ケーゴさん、ありがと」


玄関先で、靴を履いているケーゴさんにそう声をかけた。


「いいよ、それにもう気遣うことなんてないからな」


笑顔でそう言うケーゴさんの言葉に、首を傾げた。


「もう、家族になるんだからな。遠慮なんかするな。言いたいことはハッキリ言っていいんだし、わがままだって言えよ?……ちょっとユキと親子ケンカとかしてみたいんだよ(笑)」



そっか……

ケーゴさん、俺の『親父』になるのか……。


「ハハ(笑)じゃあ、今度腕相撲勝負してよ」

「おぅ。受けて立つよ」


ベランダからケーゴさんの車を見送った。

車の窓から優花と風馬が手を降っていた。