ある程度の高さまでゴンドラの中で、二人抱き合ったままだった。


ただ何も言わず、ずっと抱き合ったまま。

その時間はあっという間で、閉園間近だからって観覧車の回転早めてんじゃねぇのかってくらい早かった。


観覧車を降りて、出口に行くまでのあいだ、さっきまで繋いでいた手を繋ぐことはなかった。


なぜだか、繋げなかった。


気まずいからとか、そんなんじゃないけど。


これ以上、優花に触れたら本当に俺、どうにかなってしまいそうで繋げなかった。


「……ユキちゃんのほうが、高いとこ苦手だったね」


出口まで歩く間、やっと口を開いたのは隣にいた優花からだった。


「え、あぁ。ごめん…。あんな高いと思ってなかったわ。観覧車、舐めてた」


さっきのことを何事もなかったかのように、優花が笑って言うから、俺も笑って答える。


「ふふ(笑)でも、あたしも怖かったよ。……でもユキちゃんがギュッてしてくれたから、大丈夫だった」


だから、その笑顔が反則だって何回言ったらわかるんだろう。


いや、これは俺の心ん中でしか言ってないけど……。





優花は、俺がもし……

優花が好きだって言ったらどうする?


お兄ちゃんが何言ってんの?って笑う?


それとも、軽蔑する……?



「……なぁ、優花」

「ん?どうしたの、ユキちゃん」


突然、立ち止まって向かい合わせに立つ俺に優花が不思議そうに見上げる。


「……あのさ……」

「……うん?」



もう、晴にヤキモチなんか妬いてイライラする自分が嫌。


晴だけじゃなくて……


優花のこと、誰にも渡したくない。




「……俺……」




優花を、独り占めしたい………。