別に晴がさっきこの場所でキスをしようとしたからとか、
優花が『特別な場所』と言ったからでもない。
初めから、優花が乗ろうと言った時からそんなことするつもりなんかなかった。
でも……
優花のそんな顔見せられたら……
もう、気持ちのセーブなんかきくわけない………。
「……ユキちゃん…?」
抱きしめたまま、何も言わない俺に優花が名前を呼ぶ。
胸の中の優花の声が身体中に響く。
胸の中の優花の体温が愛しいって気持ちが叫ぶ。
胸の中の優花をもっとつよく抱き寄せる。
このまま、時間が止まればいいのにって本気で思った。
「……ごめん。めっちゃ高くて俺も怖くなってきた…。このまま……動かないで?」
「………うん。……ユキちゃん……心臓、早い……。……大丈夫…?」
小さく呟くように俺の胸の中で優花が言った。
「………優花も、心臓はえぇよ?……怖い…?」
それは自分に言ってんのかって、自問自答する。
「………うん…ちょっとだけ、怖い…」
俺も怖い。
これ以上、優花を好きになって、抑えられなくなる自分が。
優花を欲しくて欲しくて……
我慢出来なくなる自分が、怖くてたまらなかった。
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