ユキちゃんは近くのベンチにあたしを座らせると、「ちょっと待ってて」と少し離れて行った。

しばらくして、ユキちゃんは両手にソフトクリームを持って戻ってきた。


「はい。これ、優花好きそう。イチゴミルクだって。俺、バニラ」


そう笑顔であたしにピンク色のソフトクリームを差し出した。


「……ありがとう」


ユキちゃんの笑顔につられて、あたしは笑顔でそのソフトクリームを受け取った。


「……美味し〜」


冷たくて甘い優しい味が口いっぱいに広がった。


「マジ?一口、頂戴……って、ダメダメ…。…これで前、俺怒られたんだった」


ユキちゃんはブンブンって首を横に振る。


「………松丘くんに?」


そう訊くと、ユキちゃんは少しビックリした表情を見せた。


「……さっきね……松丘くんと話してたの……。この前の球技大会の時、ユキちゃんと間接キスしたの…嫌じゃなかったの?って」

「……へ?そんなこと訊いたの、あいつ」


ユキちゃんはやっぱり何とも思っていないのか、バニラのソフトクリームをパクパク頬張っていた。

そして、少ししてユキちゃんがあたしに訊く。


「……で、優花はなんて答えたの?」


そう訊いたユキちゃんは、あたしを見ている気がしたけど、あたしはなんとなくユキちゃんの顔は見れなくて、イチゴミルクのソフトクリームを見つめながら答えた。


「……ユキちゃんは……『お兄ちゃん』だから、嫌だって感じはない…って」


ユキちゃんの目を見て、嘘はつけない。


『お兄ちゃん』なんて、思ったことないもん……。


そう答えると、ユキちゃんは優しく笑う。


「…だよな(笑)兄妹だったら、そんなの普通だもんな。……じゃあ、もぉ〜らいっ!」


そう言うとユキちゃんは、あたしのソフトクリームを一口舐めた。


「あ、ずるい!じゃああたしも貰う!」


ユキちゃんがあたしのソフトクリームを頬張り美味しそうにペロッと舌を出したのを見て、あたしもユキちゃんのソフトクリームを一口舐めた。


それを見て、ユキちゃんが笑うからあたしもまたつられて笑う。


はたから見たら、恋人同士みたいに見えるんだろうな…。



本当は『兄妹』なのに………。