「あ、着いたよ!ユキちゃん!」


そう言って優花に一瞬だけ引っ張られ、触れた手。

あったかくて、すべすべとした優花の手のひらにまたいちいちドキドキして。

優花から少し出遅れて電車を出た。


電車を出たホームには晴と透子が待っていて、優花はその方向へ走っていく。

そんな優花の後姿を見て、俺はまた、もう何度目かわからない決意をするんだ。






もうこれ以上……


優花を好きになんかならないって。






* * *



「………結局、こうなるんなら晴が栗原さんだけ誘えば良かったんじゃないの?」


そう冷たく呟いたのは透子だった。


「……うん、俺もそう言ったんだけど」


遊園地に着いてしばらく経ったころ、晴が小声で俺に囁いた。


『ふ、ふ、ふ、二人きりになりたいんだけど』


緊張気味に、そして鼻息を荒くした晴に若干の嫌悪感を抱きつつ、本来のこのダブルデートの意味を思い出す。


これは、晴と優花が仲良くなる為だから仕方がない。


二人きりになんかなったら、興奮した晴は何しでかすかわかんない。


だから、一応優花の兄として晴に忠告しておいた。

そう……『優花の兄』として。


『……別にいいけど。優花の嫌がるようなことはするなよ?』と。



『わかってるよ。ったく、心配症な兄ちゃんだな』


晴のその言葉と笑顔を信じて、はぐれたふりをして、俺と透子、晴と優花の2人に分かれた。


だけど、勘のいい透子はこの組み合わせにすぐ気づいていた。


「……初めから栗原さんだけを誘う勇気がなかったってことか」


俺は優花に好意があって、透子だって多分晴に好意を持っている。


なんかこの組み合わせ、ただのあまりもんみたい…。


そう考えれば考えるほど、気持ちはどんよりとしていき、遊園地にいるというのに、気持ちは全然華やかにならない。


「まぁいいじゃん。それより、なんか乗ろうぜ!」


その気持ちは押し殺すように、俺は無理やりテンションを上げた。