風馬に「優花のこと、好きなんだろ?」と言われた試合後のあの日……

優花がお風呂に入っているときに、風馬が俺の部屋に来たのだ。

風馬のその言葉に、帰りのバスの中でもイエスともノーとも言わなかった俺に、痺れを切らしたようだ。


『今なら邪魔者いないから、ちゃんと答えろよ』


風馬は俺のベッドに座り足を組むと、なんだか偉そうにそう訊く。


『……何のこと?』


机の椅子に座った俺は、いつもならあまり開くことのない参考書に目を通しながら、聞き流そうとした。

その態度が気に食わなかったのか、風馬はため息を落とした。


『ユキってずりぃの。自分が不利になることにはそうやって避けてさ。そういうのが嫌いだったんじゃねぇの?だから、俺の時だって話そうと思ってズカズカ入ってきたんだろ?』

『………』


ごもっとも過ぎて、返す言葉が見つからない。


『………別に俺責めてるわけじゃねぇんだけど。いいじゃん、好きなら好きで。ユキと優花は血繋がってないんだから』


それにすら返す言葉が見つからない。

風馬は前に『他人なんだから』と言っていた。

だから、別に好きになったって構わないって思っているんだろうし、そこに戸籍などのモラルは考えに入っていないんだと思う。


だけど、俺には晴や持田とは違う……

風馬に気持ちを吐き出したいと思うことは、もう『他人』ではなくて『兄弟』みたいな大切な存在になっているんじゃないかと、ふと思った。


そう思ったから、


『………どっから俺が優花のこと好きなんだって思ったわけ?』


半分だけ、気持ちを認めてしまうような質問を風馬に投げかけた。

勘のいい風馬は、俺のその言葉に怪しく笑った。