アイシテルノジュモン【短篇】





すがりつくその手を踏みつけ。

見おろす。


「アイシテル? 私のこと」


尋ねてみると。

彼は喉をヒューヒュー言わせながら必死の形相で頷いた。


「そう……じゃあ、私の前から消えて?」


恐怖と驚愕で見開かれた瞳に映る。

私はとても嬉しそうな顔で笑ってた。




アイシテル

アイシテル



もう呪文は効かないの。

いつからかその呪文に捕らわれて見失ってた。

でももう大丈夫呪縛は消えたから……




「さよなら。私も愛してたわ」




背をむけた私の後ろで。

最後の呪文は最後まで唱えられることはなく。

かすれた響きはむなしく途絶えた……



【終】