六月のある夜 帰宅途中、私は猫を拾った。 大雨に打たれて傘もささずに、どこか途方にくれた表情で。 電柱の傍らに所在なげに佇んでいた。 帰るところがないという。 私は少しひとりでいるのに飽き飽きしていたし、びしょぬれの猫は、よく見ればなかなかに品が良くて小奇麗な顔をしていたから…… 「ついてくる?」 そう聞くと、屈託の無い笑顔で猫はうなずいてついてきた。