「どうしたの?」


あたしは、声がした方へ顔を向ける。

そこには、男の人がいる。
大地とも、空とも春とも、全然違う感じの人。
中学生の、あたしから見れば大人って気がする。

大人びた、整った顔立ち。


見とれてしまう。

「どうしたの?」

もう1回、あたしに聞いてくる。

「あ、フラレちゃって」

あたしは、へらへらと笑いながらいった。
でも、涙が流れる。


笑いながら、泣くなんて――……。
やってることが、矛盾だらけだよ。

「そっか、そっか」

そう言って、あたしの横に来て、頭を撫でる。
髪をぐしゃぐしゃにしていく。


知らない人は、苦手だけど、この人は平気みたい。
変だね、あたし。


「あの、名前は?」

あたしは、勇気を振り絞って聞く。
彼は、笑顔でこたえる。


「三田龍、君は?」

「境坂夕美です」

あたしは、笑顔でこたえる。


「そっか、じゃーね! あっ! 俺、今から、高校戻るんだけど、一緒に行く?」


高校に戻る?高校生なんだ――……。
そりゃ、大人びてるよなー。

「あ、邪魔じゃないですか?」


「だいじょーぶ! 男子校だから女子来たら喜ぶし。部活に行くだけだし」


「じゃあ、遠慮なく」