ゆっくりと振り返れば、はるるんは予想通り私を睨んでいて。
「な、…何?」
少し声が詰まる。
「早退は許さないわよ!授業、終わってから行きなさい!」
「えぇぇぇぇえ!そんなに待てない!」
「なら、そのメモ返して貰うけど」
「うぐっ……。それは、嫌です」
授業をちゃんと受けなきゃ駄目なんて、お母さんみたい。
いや、はるるんはいつもお母さんっぽかったか。
「あのね、梶木の家にお見舞いに行くのは良いとしても、弱ってる人のお見舞いなんて長くても1時間位で帰るのが礼儀よ!まあ、本当は、お見舞いに行かないのが礼儀だけど……」
礼儀か……。
そんな事全く考えて無かった。考えて無かったけど、
「行かないのは無理っ!」
そう断言すると、はるるんからクスクスと笑い声が漏れる。
「分かってるわよ。だから、今日の授業が終わってからって言ってるのよ」
「な、なるほど」
私の性格まで把握しての事だったのか!
先の先を考えて行動をする人っていうのは、はるるんみたいな人の事を言うんだろうな。
それにしても放課後かぁ……。
「ああ、……放課後が待ち遠しい」
そう口にしながら、窓の外へと視線を向けた。
額から流れ出た汗を左手の甲で拭う。
右手にはスマホを持って家がひしめき合う住宅街を進んで行く。
この辺りは、道自体が昔に造られているからか真っ直ぐな道が少く、分かれ道が多い。
スマホの地図がこんなにも役立つのは今回が初めてたと思う。


