「泉、ちゃんと授業聞いてなかったでしょ」
私の席へと歩いて来たはるるんが呆れた顔をしてそう溜め息混じりに言葉を吐く。
それに、合わせて顔を上げた。
「あっ、はるるん。バレバレでした?」
私が声を発した瞬間、スッと前の席の男子が自分の椅子をはるるんへと差し出す。
それになに食わぬ顔でその椅子に腰を下ろすはるるん。
めちゃくちゃ女王様っぽい!
はるるんだからこそ出来る芸当だ。
「うん。ぼけっとしながら窓の外ばっかり見てたからね」
「だあぁぁぁぁ。そっかぁ…」
ガクッと肩を落とす私にはるるんといえば、馬鹿ね。と言いながら苦笑いを漏らす。
「で、窓の外には何か見えた?」
「あー、私のお祖母ちゃんが眠るお墓がある山が見えた」
この教室の窓の外にどーんと見える山。
この時期は緑色が綺麗に映える。
「あの山ね。私の曾祖母と曾祖父もいるわね」
「そうなんだぁ。この辺りに住んでる人はだいたいあそこにお墓があるんだよね」
所謂田舎に属するこの辺りは昔からずっとこの土地に住んでいるという家が多いんだ。
「で、お墓の話はいいから、梶木は見えたの?」
さらっとお墓の話に持っていこうとしていたのが、はるるんにはバレていたらしい。
私が、梶木君が遅刻で学校に歩いてくる姿が見えないかとずっと窓の外を見ていたって事を。
まあ、でも梶木君が見えたかどうかなんて結果は言わなくても分かってる筈だ。
だって、この教室には梶木君はまだ居ないんだから。


