焦る私の前ではぁっと盛大な溜め息が聞こえる。
「あのさ、泉。休みって可能性もあるのよ」
そのはるるんの言葉で一瞬思考が止まった。
や……すみ?
「休み!ダメダメダメ!絶対駄目!」
グイッとはるるんへと顔を近付けて声を荒げると、はるるんの眉間に皺が寄り、キッと睨み付けられる。
「泉、煩いわよ!」
うー、煩いんだけども。
はるるんの言ってる事は間違ってはないんだけども。
「だって、だって、梶木君が休んだら、梶木君のあの甘い匂いをどうやって嗅げばいいの!?」
これは、相当由々しき事態なんだよ!
だが、パニックになりかけている私にはるるんはスパンッと手厳しい言葉を投げつける。
「諦めたら?」
「ムリ-!」
私には梶木君のあの甘い匂いを嗅がないなんて選択肢は導き出せないんです!
頭を押さえて絶叫したその時、タイムアウトを知らせるチャイムが鳴り響く。
あー、梶木君。今日は遅刻?それとも休み?
出来れば遅刻でお願いします!
「ご愁傷様」
そう言って立ち上がり、ひらひらと手を振って自分の席へと戻って行くはるるん。
その顔が楽しそうに見えるのは私の気のせい…なんかじゃないと思う。
梶木君の匂いを嗅げなくて打ちひしがれてる私を見て楽しんでいるだろうな。
1時間目の授業が終わった瞬間、べたっと机に俯せる。
力尽きた。
その一言に尽きる。
梶木君の匂いを嗅げないと思うだけでこんなにも授業に集中出来ないなんて。
はっきり言って、授業で何をしていたのかすらあやふやだ。


