このまま梶木君とさよならになるのも何だか嫌で。
「じゃあさ、梶木君はぽん菓子好きじゃないの?」
そう言葉を紡いだ。
別にって言葉が返ってくるんだろうなと思っていても、その質問で少しでも長く梶木君と一緒にいる時間が増えたら…というあさましい考え。
だったのだが、梶木君から返ってきた答えに目を丸くした。
「僕は、……ばあちゃんがいつも食べてるから好きになっただけ」
思わず頬が緩む。
「好きなんだ!」
「好きだけど」
その正直な言葉に胸がギュッと締め付けられる。
私の事を好きって言った訳じゃないって分かるのに。心臓、……壊れそう。
「あ……、あー、だからぽん菓子。梶木君。…匂いがいつもしてるんだね」
頭をがしがしと掻きながら、へらへら笑って言葉を紡ぐが、今一何をいっているのやら。
「別にそんな匂いさせてるつもりないけど。森山さんの鼻が変なんじゃない?」
私の変化になんか全く気付いていない彼に、少しほっとする。
「いーや、私の鼻は正常です!」
「何の自信?」
「ぽん菓子好きだからの自信!」
駄菓子屋の前で足を止めてこんな風に言い合える。
たったそれだけの事が、凄く幸せ。
「ほんと森山さんって、馬鹿だよね」
「何で!?」
「発言が馬鹿っぽい」
「酷っ!」
突っ込んでいるのに、わたしの口角は上がっていて、今凄く笑顔なんだと思う。


