バクバクという大きな音が頭に響く。
火照り出す頬を隠す事も出来ずにただただぼけっと梶木君を見つめるしか出来ない。
梶木君が急にそんなに優しい笑顔を向けるから時間が止まってしまったんだ。
狡いよ。
私の『好き』がどんどん大きくなっていくのは、不意打ちをしてくる梶木君のせいだ。
私がそんな事を考えている間に、梶木君はお会計を済ませて手にぽん菓子の袋を2つ持っている。
そして、手に持っているぽん菓子を少し上に上げ私へと顔を向けると、フッと鼻で笑う。
「残念。僕のばあちゃんが好きなんだよ」
「えっ、えぇぇぇぇえ!梶木君のおばあちゃん!?」
おばあちゃんが居たの!
んでもって、梶木君じゃなくておばあちゃんが好きなの!?
「そっ。昔からばあちゃんの大好物がぽん菓子なんだよ」
梶木君のおばあちゃんの大好物がぽん菓子だったなんて。
なんて素敵なおばあちゃん!
「じゃあ、二人とも気をつけて帰りなさいな」
レジの後ろに置かれている小さな椅子に腰を下ろしたおばあちゃんの言葉に、
「あっ、はい。さよならー!」
と声を上げる私の隣で梶木君は少し頭を下げていた。
そのまま土間で靴を履くと、店の外へと歩を進める。当然、隣には梶木君がいる訳だから、梶木君の匂いを堪能しまくりだ。
外に出るとまだ日が明るく、駄菓子屋の中が少し薄暗かったせいか太陽が眩しい。
ちらっと隣の梶木君を盗み見れば、梶木君も眩しかったらしく目を細めている。


