玄関から外に出ると、既に6月という気候のせいか蒸し暑い空気がぶわっと身体に纏わり付く。
ぽん菓子を売っている駄菓子屋までは、自転車で10分。程よく遠いこの距離に嫌気が差す。
近くにスーパーやコンビニはあるのだが、如何せんぽん菓子は置かれていないんだ。
この辺りでぽん菓子を売っているのは今から行く駄菓子屋だけだ。
あっ、後は秋祭りの時には広場でぽん菓子が売られるけど。
玄関の横のガレージに置かれている自転車に跨がると、ペダルをグイッと踏み込んでスピードを上げて駄菓子屋へと向かって行く。
顔に当たる風が少しだけ心地良く感じる。
ぽん菓子まであと10分。
昔ながらの家屋の前まで来ると、そこで自転車を停める。
ふと上へ顔を向ければ、でかでかと屋根の上にある看板は駄菓子とだけ書かれて掲げられているそれは、年期が入っていて古臭い。
その中へと歩を進めれば土間があり、そこで靴を脱いで駄菓子が並べられている畳みの部屋へと足を踏み入れるのだ。
この畳みの部屋で買って直ぐに食べて帰る子供も多く、そこで仲良くなったりするってのがこの駄菓子屋の醍醐味だ。
昔ながら。今風に言い直すとアットホームという所だろうか。
「おばあちゃん!ぽん菓子ある!?」
畳みの部屋の奥にある少し昔の型であるレジの後ろに座っている白髪のおばあちゃんへと向かってそう大声を出す。
それに、ビクッと肩を揺らして私の方へゆっくりと優しい視線を寄越してくれるこの駄菓子屋のおばあちゃんは、いつもと変わらない。


