私、……梶木君に好かれる様になるんだろうか?
む、無理そう。
「まあでも、……馬鹿正直は嫌いじゃないよ」
うちひしがれていたその時を狙ったかの様なその言葉にドクンッと心臓が跳ね上がる。
嫌いじゃないって、私を!?
「本当に!?」
梶木君へ顔を思い切り近付けて、そう聞き返す私の心臓はとてつもなく早鐘を打っていて。
お願いだから、本当って言って!
と切実に願っているんだ。
興奮し過ぎてか、鼻息が荒くなる。と、同時に落ち着く甘い香りが鼻を通り抜ける。
梶木君といえば、私の鼻息が顔に当たったのが不快なのか、眉間に皺を寄せる始末だ。
しかもその顔で、浮き上がった私の気持ちをどん底へと突き落とす。
「嘘」
「嘘ですかい!」
大声で突っ込んでしまったのはもう仕方無い事だ。
だって、ちょっと期待してしまってたんだから。
が、梶木君の言葉はそれで終わりじゃなかった。
「の嘘の嘘の嘘の嘘の嘘」
「ん?どっち?」
嘘が何回言われたの分からなくなってしまった。
もう一回言って!と口にしようとした瞬間、梶木君が教室の前にある時計を指差し、ゆっくりと唇を動かす。
「ほら、もうチャイム鳴るけど」
ニヤッと笑っていつもの様にそう言う梶木君は今日も健在だ。
慌てて後ろを振り返り時計を確認すれば、もう授業開始のチャイムが鳴り響くだろう時間を針が指している。
「えっ!本当だ!まだあんまり匂い嗅いでない」
今日はまだ、そんなに匂いを嗅げてない!
まだ足りてないのに!


