右耳にスマホを当てて、ころんとベッドの上で寝転がる。


目に映るのは私の部屋だが、耳に届く声音の主は部屋にはいない。



『あー、泉。もう1回言って貰える?』



電話口から聞こえる怪訝そうなはるるんの声。


多分、電話の向こうで首を傾げているのだろう。



「だからー、あのだね。私、梶木君の匂いが好きなんだけど、梶木君自体も好きだなぁって今日図書館で会った時思ったり。梶木君の行動で胸が締め付けられたみたいに痛くなったりするんだけど。

これって、どっか変なのかな?って悩んではるるんに聞いているんですが……」



今さっきした説明を、少しだけ簡潔にしてもう一度繰り返す。


なんだか、自分で口にしてそう言うだけで顔が熱くなる。


恥ずかしい。


それ位、自分が変なんじゃないかと思ってるんだと思う。


だって、やっぱり梶木君の事に異様に反応を示す私の心臓は普通じゃない。



トクトクと音をたてている心臓に手を当てて、そんな事を考えていると、はるるんの呆れた様な溜め息が聞こえた後に言葉が続く。



『泉って、馬鹿よね』


「な、何で!?」



まさかのそのフレーズ!


私は一体何人にそう言われるんだろう……。



『何もしてなかっても梶木の顔が頭に浮かんだり、梶木の近くにいるだけで心臓が凄い速さで脈打ったり…って事でしょう?』


「そうそう。それだよ!」



凄い!


はるるんの言う事はまさしくそうで、頭から梶木君が離れないんだ。


匂いだけじゃなくて、彼そのものが。