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日曜日の朝の図書館は、人が多い。
大きなガラス窓から太陽の光を入って、ズラッと並べられた本棚に出きる光の筋が、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。
そこを静かに行き交う人達。
それぞれ皆、目的の本を探したり、何か面白いものはないかな?と探したりしている。
その中の一人が私なのだが、
「あー、どれが良いか全く分からん」
そう独り言を口にしながら、生物に関する本が配列されている棚を凝視する。
全部一緒に思える。
っていうか、何について書くかも考えてなかった。
その時、ふと一冊の本の題に目が止まる。
『遺伝の法則』
遺伝か。……確か、メンデルの法則だったっけ。
これなら書けるかも!
私の背よりも高い位置に納められているその本に手を伸ばすが、中指の指先が触れるだけで、本棚から抜く事が出来ない。
「と、届かん……」
次は爪先立ちで挑戦してみようと、爪先立ちをした瞬間、後ろからぬっと出てきた手に目的のその本を取られてしまった。
と、同時に鼻腔を擽る甘い香り。
「えっ!?」
ガバッと後ろを振り返ると、目に入るのは私よりも背が高くて意地悪な笑みを浮かべている梶木君だ。
な、何で梶木君が?
「はい。これ欲しかったんでしょ?」
さらっと私にその本が差し出される。
これって、……取ってくれたって事だよね。
バクバクバクと急激に早くなる鼓動に息がつまる。


