「忘れてたんなら、今受け取るが?」
怒鳴ったのを悪いと思ったのか、少し眉を下げてそう言ってくれる原田先生の言葉が胸に痛い。
痛過ぎる!
「出すのを忘れてたっていうか、…宿題をするのを忘れてたっていう…ね」
おどけた調子で言ってみると、ぐぐっと原田先生の眉間の皺がみるみる内に深くなっていく。
これって、……ジ・エンドだ。
「はあぁぁぁぁあ!あれだけ言っておいたのにか!成績に関わるぞって!」
「ですよね」
スーッと視線を原田先生から逸らす。
そうしないともうその場に立っていられない。
でも、そんな私の態度が原田先生の怒りに火をつけたのか、
「森山、赤点付けられたいのか!?」
なんてとてつもない脅し文句が飛んでくる。
「滅相もございません!」
思い切り首を横に振ると、うん。と何だか納得した様子の原田先生。
そして少し何かを考えた後に口を開いた。
「なら、原稿用紙4枚分。何か生物の事についての論文書いて来いっ!」
「4枚!多っ!」
絶対無理!
そんな技量、私には無い!
ムリ、ムリ、ムリ!
だが、一言も口には出していないのに私の気持ちがまる分かりだったのか、原田先生の鋭い視線が突き刺さる。
「赤点にするか?」
「4枚書いて来ます!」
赤点よりは、4枚書いた方がましだ。
私の即答に気を良くしたのか、原田先生がにやつく。
おっさんの笑顔。
……全然格好良く無いなぁ。
これが、梶木君だったら見惚れるんだけど。


