「多分、私と同じ位心配そうな顔してたわよ」
「…………」
心配そうな顔って……。
ドキドキする心臓が煩く頭に響く。
「さて、もう放課後だから帰るよ!」
私のドキドキと鳴る心臓に気付いていないはるるんはそう言うと、ベッド同士の間仕切りになっているカーテンをシャッと開ける。
そのまま、ドアの方へと歩いて行くはるるん。
保健室全体が視界に入るが、どうやら先生はいないらしい。
ベッドから足を出してストンと降りながら「あっ、うん」と口にすると、くるっとはるるんが私に振り返った。
「泉の鞄、教室だからちょっと待ってて!」
「あっ、待って!はるるん!」
「何?」
慌ててはるるんを引き止めたが、はるるんはキョトンとしている。
さらっと何でもないように行動を起こしてくれるが、何から何まではるるんにしてもらう訳にはいかない。
保健室で寝ている私が目が覚めるまで帰らずにずっと隣にいてくれたのも彼女なのだから。
「もう元気だから自分で取りに行くよ!」
「でも…」
はるるんの隣まで足早に進むと、ぽんっと彼女の肩を叩く。
「大丈夫だってば!」
そこでフッと鼻で笑った後に微笑まれる。察しの良いはるるんは、私の気持ちに気付いてくれたのだろう。
「じゃ、下駄箱先に行ってて!」
「了解」
はるるんに向かってひらひらと手を振ると保健室から出て教室に向かって駆け出した。
勿論、走るスピードはいつもよりゆっくりだが。


