「お名前は?」
「もりやまいずみ」
自分の名前を口にすると、皺だらけの顔を更にくしゃくしゃにしてふわっと笑うその人。
その笑顔を見た瞬間、何故だかとてもほっとした。
「そっかぁ。いずみちゃんって言うのかい」
そう言って私の頭を大きな手でゆっくりと撫でてくれるその人からは、とても甘くて落ち着く香りがしていて、思わず大きく息を吸う。
忘れる事のない甘いその香り。
私の大好きなぽん菓子の匂い。
ーーーーー……………
ゆっくりと瞼を開けると、オレンジ色の光が目に飛び込んでくる。
いきなりの光に思わず目をギュッと細める。と、同時に聞こえてくる良く知った声音。
「あっ、目ぇ覚めた!?」
その言葉と共に私の視界に映る彼女は、心配そうな顔をしている。
「はるるん」
彼女の名前を口にすると、首を動かして周りを見渡す。
白い天井に、白いカーテン。間違いなく私の部屋ではないこの場所。
むくっと上半身を起こせば、私に掛けられていた白い掛布団。
白いカーテンの隙間から入ってくるオレンジ色の光が眩しかったらしい。
「ここって?」
首を傾げると、はるるんの眉間にグッと皺が寄る。
「保健室のベッドよ。やっぱりあんた倒れたのよ」
「マジ!」
私の叫びにコクッと頷くはるるん。
私、本当に倒れたんだ……。
確かに、草むしりの所で立ち上がろうとした時から記憶が無い。


