はるるんも梶木君も既に相当量の草をむしっているのが分かる。結局、私が一番出来が悪そうだ。
ズキズキと響く頭の痛みを和らげるかの様に、隣からふわふわと香る梶木君の甘い匂い。
その匂いに誘われる様に少しづつ足がそっちへ向かう。
「森山さん、近い!」
梶木君のその声が聞こえてきて、そこでハッと我にかえる。
私の顔が梶木君の顔の真横にある。
というか、私の鼻は後少しで梶木君の顔にくっつきそうだ。
匂いにつられて近付き過ぎてしまった!
慌てて、梶木君から顔を離すとへらっと笑う。
「あっ、ついつい」
ポロッと出た言葉は完全な本音だ。
本当についつい近付き過ぎてしまったのだ。
「本当に鬱陶しいよね、森山さんって」
冷たい視線を向けてくる梶木君の耳はほんのりと赤く染まっていて、多分相当怒っているのだと思う。
「酷っ!」
「うざっ!」
突っ込めばそう返ってくる言葉もいつもより刺がある気がするのは、彼を怒らせたんだろうな…という思いが強いからかもしれない。
梶木君は私に近付きたくなかったんだもん。
そりゃ、ついつい近付き過ぎた私が悪い。
でも、でも、そんなに怒るなら梶木君も私の隣なんかに来なきゃ良かったのに……。
ぶすっと不貞腐れて、そんな事を考えながら草を引っこ抜く。
力の入れ具合が悪かったのか、茎のところでブチッと切れてしまったその雑草は何だか切ない。


