「あれ?梶木君、場所移動?」
首を傾げる私の隣にストンと腰を屈めて意地悪そうにニヤッと笑う。
「こっちの方が草が少なそうだからね」
そう言って私の隣の草に手を伸ばしだした梶木君。
だが、梶木君の言葉はどちらかといえば間違っていて、ここは明らかに草の量が多くて終わりが見えない位だ。
ここに来る途中で見た感じだと、プール裏の方がまだましだったと思う。
「えっ!ここ多いよ」
彼の言葉に突っ込んだ私を梶木君は馬鹿にしたようにフッと鼻で笑う。
「森山さんが僕の分まで頑張ってくれるから、こっちの方が少ないんだよ」
「何ですと!?」
まさかの発言に声をあげると、
「煩いよ、森山さん」
と冷静にあしらわれる始末。
梶木君の中で私ってどんな存在になってるんだろう……。
凄い低位置にいる気がする。
「あのね、梶木。泉、今日は具合悪いのよ。お願いだから、変な仕事押し付けたりしないであげてよね」
「はるるん」
とんでもなく酷い事を言う梶木君を睨み上げて、そう言ってくれるはるるんが、天使の様に見える。
感謝の眼差しをはるるんに向けていると、
「杉浦さんには関係無いよ」
「あっそ」
そんな二人の刺々しい会話が展開される。
当然はるるんは膨れっ面で、梶木君は無表情。
何とも嫌な雰囲気が充満している。
その後、無言で黙々と進む草むしりは酷く居心地が悪い。
私が自分の分も頑張ってくれるなんて言っていた梶木君も居心地が悪いのか無心に草むしりをしている。


