「おかえり。それ、梶木から?」
「うん。ハンカチ」
私を待っていたらしいはるるんがそう聞くのに、顔を上げずに返事をする。
顔を上げなくても、『それ』が梶木君のハンカチを差している事なんて分かりきっている。
「ふーん。またもや意外」
「そう?私が倒れたら助けたく無いからっていう梶木君らしい理由で遠ざけられた感がしますが」
理由を聞いても何故か納得出来なかったはるるんはその後、うーんと唸った後に、
「梶木って、……相当のひねくれ者ね」
とボソッと口にした。
ひねくれ者?
梶木君はドストレートな気もするけど。
少し顔を上げて不思議な顔をして首を傾げる私に、独り言!と微笑んで言われてしまえば、それ以上何かを聞く事なんて出来ない。
再び突っ伏すと、はるるんの手が頭を撫でる。
その感触が心地好くて思わず目を瞑った。
はるるんって毎度ながら思うんだけど、……お母さんみたい。
昼休みが終わり、予鈴のチャイムが鳴り響くとぞろぞろと教室から出て、外へと向かう生徒達。
全学年一斉だからか、人が凄く多い。
人でごったがえす廊下は歩くのも必死なんじゃないかと思う程だ。
「泉、本当に保健室行かなくても良い訳?」
ふらふらと立ち上がった私に心配そうな目を向けてくるはるるん。
「後、草むしりだけだから、大丈夫だよ」
にこっと笑ってそう答えると「そう?」と首を傾げる。
「大丈夫だって!」
右手でバシッとはるるんの背中を叩けば、心配顔から一辺、思い切り睨み付けられる。


