身体は机に突っ伏したまま、顔だけをドアに向けていると、今日もやる気のなさそうな感じで教室に入って来た梶木君。
いつもならその瞬間叫びながら彼に駆け寄って行くのだが、今日はその元気もない。
何とか、あの香りを嗅がねば!と思い身体を起こして立ち上がると、ふらふらとした足取りで彼の方へと歩いていく。
「そのふらふら具合でも梶木の所に行くんだ」というはるるんの呆れ声が後ろから聞こえてくる。
「あっ、か、…梶木くーん」
いつもと違いよろよろと近付いていく私に梶木君はもろに不信感を顔に出している。
「どうしたの森山さん?今日はビックリする程普通だね」
普通って……、
「いつも普通だよ、梶木君」
「風邪ひいてるの?」
私の突っ込みはさらっと流して、首を傾げる彼。
いや、いつもの事だけどね。
「違う、違う。ただの片頭痛」
頭の痛みを堪えながらへらっと笑って首を振ると、
「ふーん。良かった」
という梶木君らしからぬ優しい言葉を吐かれる。
えっと、これは……、
「もしかして心配してくれたとか!?」
頭の痛みも吹っ飛ぶ程嬉しくてそう聞いてみたが、今日もやっぱり梶木君は梶木君だった。
自分の席に着いた梶木君が椅子に腰を下ろした所で、立っている私に対して上目使いになる筈なのに、見下されている様に感じる目を向ける。
「そうだね。僕に風邪を移してくるなら、甚だ迷惑だから半径1メートル以内に入って来ないで!って言おうと思ってた所だよ」
酷っ!
毎度ながらの冷たい視線が突き刺さって痛い。
そして頭も痛い。


