「あっ、ちょっと…」



右手を彼の方へと伸ばして引き止めようとするが、その声も途中で消えていく。



「颯太。昼、食べようぜ!」


「おう」



私に見向きもしないで仲の良い男友達との会話が始まったのだから、私はもうお呼びでない。


流石の私もそういう空気はちゃんと読む。



コロッケパンを手に持ったまま、ストンと椅子に腰を下ろせば、目の前にはニヤついているはるるんの顔。



「梶木の意外な一面ねぇ」



可愛さの欠片もない男と言っていただけあって、私にパンを恵んでくれた梶木君がはるるんの目には意外に映ったのだろう。



それにしてもだ……。



手に持っているコロッケパンへと視線を落とす。



「これ、どうしよう?」


「貰っときなよ。言い方は凄く悪いけど、泉の為に買って来たんじゃない?」



はるるんのいう通り、私もそうだと思う。


だって、自分の席に座って友達とお昼を食べている梶木君は、目的の焼きそばパンを食べていて。


梶木君は別に大食いっていう人でも無いし、このコロッケパンを彼が買う必要なんて本当は全く無いんだ。


言い方はあれだけど、まあ、渡し方もどうなんだ?と思う所だけど、……梶木君は私の為にこのコロッケパンを買って来てくれたんだ。



「うん。だと思う」と口にする私の心臓はトクトクと少し鼓動が速い。



「何か癪だけど良かったわね。梶木が良い奴で」


「えっ?」



はるるんの口から梶木君の誉め言葉が出てくるなんて思ってもみなかったから、ポカンと口を開けてしまう。