「そう。ぽん菓子が出来る音と同じさ。ぽんっといきなり出会ったとしても。ぽんっとその時間が直ぐに終わってしまったとしても。

その間に一緒に笑い合えたとしたら、何があってもその相手の事は忘れる事は無いんだよ。

例えぼんっと相手が居なくなってしまってもね」


「忘れない?」


「ほら、いずみちゃんの手にあるぽん菓子。そのぽん菓子の味が一度食べたら忘れられないのと同じで、そんな出会いは決して忘れない」



正直に言ってしまえば、この時はおばあちゃんの言っている意味がよく分からなかった。


でも、このおばあちゃんの事を忘れないのならそれでいいかと納得した気がする。


それに、


「だから笑っておくれ、いずみちゃん」


そうおばあちゃんに言われたら泣き止んで笑わなきゃ!って思っちゃったんだ。



「う、…うん!」



ニカッと歯を見せて笑った私に、おばあちゃんも歯を見せて笑い返す。


そして、くしゃくしゃっと私の頭を撫でる。



「忘れずに覚えていたら、またきっと何処かで会える。それが運命ってやつだよ」


「運命?」


「そう、運命だよ」



その言葉が紡がれたと共に頭から離れていくおばあちゃんの手。


頭にあった温かい感触が消えていく。


そして、


「またね。いずみちゃん」


手を振りながらそう言って去っていくおばあちゃんの姿を暫くその場で見つめていた。



あのおばあちゃんにいつかまた会える事を願って。



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