その後、走ってきたお母さんにギュッと痛いほど抱き締められた。その時お母さんが「良かった」と何度も言っていた気がする。


ほっとした。その時の私の気持ちはその一言に尽きる。


でも、お母さんが優しいおばあちゃんに頭を下げているのを見た途端に、もうこのおばあちゃんとバイバイしなきゃならないんだって思って急にまた悲しくなってしまったんだ。


だから、ポロポロと涙をいきなり流し出した私にお母さんが驚いた顔を向けていたと思う。


お母さんの手をギュッと握りながらも、目はおばあちゃんに向けていて。



「おばあちゃん、…もうバイバイなの?」



涙声でそう言う私の頭にふわっと優しくおばあちゃんの手が置かれた。


その手がゆっくりと頭を撫でてくれる。



「そうだね。でも、泣かないよ」


「でも、…でも」



お母さんと会えたのは嬉しかった。


でも、このおばあちゃんともまだ離れたく無いっていう我が儘。



「じゃあ、魔法の言葉を教えてあげよう。いずみちゃんは知ってるかい?ぽん菓子の魔法の言葉を」


「ううん。知らない」


「ぽんぽんぼん。それが、魔法の言葉」


「ぽんぽんぼん?」



首を傾げると、くしゃっとおばあちゃんの顔の皺が増える。