「教室の窓の外。……そういう事か」
再び俯いてそう呟く梶木君は、私が誰か大切な人が亡くなっているんだと気付いていた理由に納得したのだろう。
「いつもは馬鹿みたいに鈍い癖に、こんな事だけ鋭いとか。ほんと、ムカつく」
「うん。ごめんね」
何と言われようと、私は謝る事しかもう出来ない。
「森山さんのせいで。……森山さんが僕に言っちゃうから……」
ポツリポツリと言葉を紡がれていく。
私はただそんな梶木君を見守るだけ。
「嘘で固めた壁が壊れてく」
自分の膝に顔を埋めてそう言う梶木君。
嘘で固めた壁はいつかは壊れるものなのかもしれない。でも、今その壁を叩き壊したのは紛れもなく私だ。
静かに「うん」と言うと、梶木君の肩が僅かに揺れた。
「ほんと、……ムカつく」
「ご、…めんね」
ムカついて当たり前だよ。
「森山さんなんて嫌い」
胸に突き刺さるその言葉に胸が痛い。
言われるのも予想出来ていた筈なのに、実際に面と向かって言われればその言葉の鋭さは、私の想像をはるかに通り越えていく。
視界が霞む。
でも、ここで私が泣くのはお門違いってもんだ。
歯を食いしばって、
「うん。……ごめんね」
そう何度も謝る以外は何も出来ないんだ。
私がそう謝った後にどれくらいの時間が流れたのかは分からない。
時間にしたら1、2分だったのかもしれない。
それでも、私には凄く長い時間に感じたんだ。
きっと重苦しい雰囲気がそう思わせていたのだろう。


