「森山さんって、ムカつくよね」
「うん」
知ってる。凄いムカつく事を今したのを。
チラッと横目で梶木君を伺えば、足を伸ばして座っていた筈の梶木君がいつの間にか私の隣で三角座りをしている。
足を抱えているその姿は小さくなって自分を必死で守ろうとしているかのようで、胸がまた痛くなる。
「いつから、……気付いてた訳?」
「確信したのは昨日だよ」
「疑ったのは?」
「一昨日」
全部、病院で梶木君に会ってからの事。
「それまでには…何も?」
何も疑っていなかったのか?という質問なんだろう。
「うん。考えもしなかった。でも、……梶木君にとって大切な人が亡くなっているんだろうなって事は、2年になって梶木君と同じクラスになった時から、薄々は気付いてたよ」
「そんなに…早くから?…な、…何で?」
ゆっくりと頭を上げて私を見る梶木君の口から、途切れ途切れのその言葉が紡がれる。
何で?って、……そんなの分かるに決まってるよ。
だって……
「私は梶木君に毎日引っ付いていたんだよ。私は梶木君が大好きなんだよ。梶木君がたまに教室の窓の外を見ながら切なそうな表情をしていたのを見落とす筈がないよ」
同じクラスになった時から、私と話している筈なのに、たまに窓の外を見ながら切なそうな顔をしていたんだよ。
私達の教室の窓の外に見えるのは、このお墓のある山だけ。
それをそんな顔で見ていたら、誰かのお墓があるんだろうな…って思うのは至極当たり前の事。


