花束をそこに置く訳にもいかないから、こないだ花束が置かれていた木々が生い茂った所に私も置いてこようって思って外に出たんだ。
その時に、一人の左足を怪我して松葉杖をついた女の子に会っちゃったんだよ。
私の言葉に目を見開いて、
「な、…何て……?」
震える様な声で聞いてくる梶木君。
梶木君が動揺しているのがヒシヒシと伝わったくる。
「白百合の花束をそこに置く男の人を私と梶木君が病院で会った日にも見たって。おばあちゃんの命日だからってその男の人が言ってたって。
その亡くなったおばあちゃんの名前は雪さんなんだって」
男の人とその女の子の会話はきっと嘘一つ無い会話だったんだろう。
その女の子にもう会う事が無いって分かっていたからの会話。
「それって、……梶木君の事だよね?」
そう聞く私から、スッと視線を逸らせて息を吸い、吐くと共に溜め息が彼の口から漏れる。
その後に続いた彼が呟いた言葉。
「そう……だよ」
消え入りそうなその言葉を聞いた瞬間、胸がギューッて痛くなる。
分かっていた答えだけど、それを本人が肯定すると、もう何があっても私の言った事は間違いではなかったと思い知らされる。
自分で言った癖に。
それでも、そんな私の言った事を覆す様な真実を梶木君が言ってくれるのを何処かで期待していたのかもしれない。
そんな事無理なのに。
無理になる様にしたのは私なのに。


